このブログでは物件管理にまつわる作業あれこれについても、自分たちが携わったり、関係したことを記事にしていきたいと思います。場合によっては大家さん自らやってる作業もあるかもしれませんが、人や場所が変われば、やり方や事情も変わってきたりするもんだと思います。記事を見て「そんなの当たり前に知ってるよぉ。」なんて読み飛ばさず、意外と新たな知見になるかもしれませんよ?会員の方で「このやり方のほうが効率的だよ!」とか「こうしてみたらもっと良くなると思うよ?」など、記事コメントや交流会などでご意見いただけたら嬉しいです。
ときには「え?そんな細かいことまで…」みたいな記事も出てくるかもしれませんが、大きなことから些細なことまで大家さん達の悩みのタネって日々数多くあると思うんです。みんなで持ち寄った知識を共有することで、管理の作業もどんどん洗練されて効率的、効果的な方法が見つかっていく。新しい技術や発想があったら既存の方法と比較検討して試してみる。実はこれもREVOでやりたかったことのひとつなんです。
…と、長い前置きとなりましたが、今日はグリーストラップのお話。
下水道のお話
ここ数十年で岡山県の都市部は下水道化もかなり進んで、汚水の汲み取りや浄化槽なんていう設備も少なくなってきました。下水道化によって近隣河川も昔のようにヘドロが堆積したり、悪臭を放つような川もあまり見かけなくなってきました。
そう考えると「下水道の整備による環境負荷の低減って大きいよなぁ。」と思う反面、家庭の生活様式って昔とさほど変わっていないんですよね。メーカーの企業努力によって食品や洗剤そのものの環境負荷って低減されていると思うんですけど、それでもアブラはアブラ、洗剤は洗剤なわけで。。
じゃあその汚れた排水ってどこを通ってどこへ行くの?という話ですけど、遠い記憶にありますよね?小学校で習った「上水道と下水道のしくみ」です。で、1970年代以降に建築された住宅、マンションであれば、敷地内で汚水と雑排水に分かれているケースが多いです。浄化槽などの設備から下水道工事を経て、下水道化された場合も同様です。
それ以前は合流式といって、汚水と雑排水が敷地内から一つの排水管で下水道へ接続されていたようですが、環境負荷を考慮して、上記の汚水と雑排水に分かれている分流式へ移行していったそうです。まぁ確かに同じ排水の類ですけど、排泄物が雑排水と一緒になると、臭いを含めた衛生環境はかなり悪くなるであろうことはだいたい予想がつきますね。。
それとあともう一つ、排水としては比較的クリーンと言える雨水、これも家庭から排水されるものです。雨水は屋根や地面に降り注いだ雨が、雨樋や側溝に流れて、雨水桝に溜まって敷地外の側溝~近隣河川まで流れていく、という仕組みです。
随分長く下水道についておさらいがてら書いていますけども、今回はその中でも雑排水を下水道に流す手前に設置されているグリーストラップの清掃をタクの物件で行ったので、その様子をお伝えしようと思います。
グリーストラップ清掃
グリーストラップというとあまり聞き馴染みがない方もおられるかもしれませんが、住宅の敷地内にいくつかマンホールが設置されてる中のひとつで、小規模なものは単に溜桝(ためます)なんて呼び名だったりします。集合住宅などの賃貸物件の場合は、複数世帯の雑排水をまとめて集約するために、大型の四角い枡が設置されていたりします。
で、実物なんですが、これが清掃前のグリーストラップです!(画的にお見苦しいので少し小さめに表示してます)その名の通り、グリース(油)をトラップ(捕まえる)ためのものですから、普通に使っていれば排水過程の油脂類がここに集約されている訳です。泡立ちながらコッテリとした油が排水に混じって凝縮されていますね~。
構造説明はキレイになった写真を使って説明しますので、ひとまず清掃の手順を解説したいと思います。
グリーストラップの清掃頻度
まず、グリーストラップの清掃頻度ですが、一般的な住宅の場合は、だいたい目安として半年に1回程度が望ましいとされています。ただしグリーストラップの大きさや、入居者の生活スタイル(外食/自炊)や単身~家族入居でも排水量そのものや汚れ方が異なりますので、それぞれの物件ごとに適切な清掃時期を見極めることが大切です。ちなみにマーシーの自宅では、比較的気候が穏やかな春と秋にやってます。作業するのに暑いのも寒いのも億劫なので。。
手順1:堆積した沈殿物や浮遊物を取り除く
で、フタを開けて最初にやることなんですが、それは①【中に堆積したり浮遊しているアブラの塊を掬ってゴミ袋に入れていく】ことです。グリーストラップの大きさ次第で使い分けが必要かもしれませんが、穴あきお玉や麺上げの湯切りザルなんかを使用して、この水中からただひたすらに白くなった油の塊を掬い上げてはゴミ袋に入れていく…を繰り返します。上部や側面に汚れがこびり付いていたら園芸用のスコップやブラシなんかもあったほうがいいかもしれません。なかなか素手で触るには勇気のいるヨゴレですし、足よりも低い位置なので、素手だとなにせ作業がやり辛いのなんので。。
手順2:汚れた水を取り除く
ひとしきりやって大半の油の塊が取れたら、次はこの②【内部の汚れた水をいったん抜いて、底部に堆積している油やゴミをきれいに取り除き】たいわけです。清掃前の水って、写真のような「漆黒の闇」のような色をしているので、水中の様子を観察できる状態ではありません。ザルやお玉で掬ったところで、結局スミズミまでの汚れって取りきれていないんですよね。なので底部の様子を確認して、底の方までキレイに掃除するために、どうにかしてこの汚れた水をどこかへ捨てる必要があります。
真っ先に思いつくのは、『這いつくばってバケツで水を汲み出す』ことなんでしょうけど、深さと水面の低さから、これを実際にやろうとすると相当な重労働です。というか普通のバケツじゃとても底の方はおろか水面にまですら届きません。柄の長いひしゃくを使うのはアリかもしれませんね?ただこの水量だと途方もない回数やらないと終わらないでしょうし…『ゴム長履いて槽に入って汲み出す』なんてこともできるかもしれませんが、安全面と精神衛生上この中に入るのはなかなか気が進みません。そこで「物件のグリーストラップ清掃は自分でやるゾ!」とタクは腹を括ったんでしょうね、なんと彼はこの作業のために排水ポンプを持っているんです!排水ポンプを使えばこの汚れた水を、まさしく己の手を汚すことなく、なんなく生活排水としてあっさりと抜き取ってしまえるんです。なんて効率的な…
グリーストラップの内部構造
では中が見えるようになったのでここで構造を解説します。
まず雑排水は物件内の排水管を通って写真(2)の上部にある管から出てきます。
そのすぐ下には流れてきた固形物をキャッチするために、底が網目状のトレイが設置されています。
「これでほぼ液体だけになったからこのまま下水道へ流したらオッケー!」と思ってしまいますが、グリーストラップの本来の役割はこれ以降で発揮されます。
固形物が取り除かれた排水は、仕切りの水量を超えたときに、真ん中の槽へ移動します。この真ん中の槽で主に流れてきた油をキャッチします。
油ってキッチンで洗い物として流してるときって固形じゃない状態ですよね?冷えて固まった状態だと油汚れが落ちないから、お湯を使って洗い流して…ってしますよね?
つまりこのままだと、まだぜんぜんグリース(油)がトラップ(捕集)されてないんです!油を冷やして固形化することで、水と油をこの写真(2)の真ん中にある二槽目で分けてやろうという仕組みなんです。固形化した油は二槽目に残って、油分が少なくなった状態で二番目の仕切りを越えて流れていきます。
写真(2)の下部にある三槽目でようやく排水管に到達しますが、排水管は『排水トラップ』といって、グリーストラップ~下水道間を水で仕切ってニオイや害虫などを入らせないようにするものがついています。この三層目も二層目と同じく沈殿槽のような役割をしますので、さらに排水中の汚れをここで分離させることができます。
手順3:側面~底面を清掃する
以上、ざっくりと構造説明をしましたが、それぞれの槽に溜まっている固形物がなんとなくイメージできたんじゃないでしょうか?③【槽の中の汚れを、ブラシや高圧洗浄機を使って洗浄、汚れた水をポンプで汲み出し~】これを繰り返して写真(2)の状態になります。スッキリサッパリ、ビフォーとアフターで見ると気持ちがいいぐらいにキレイになってますね!
手順4:規定量まで水を張る
槽の中にきれいな水を規定量まで入れて、清掃完了です!
グリーストラップは定期的なメンテナンスが必要
上記でなぜわざわざ長ったらしく構造説明までしたのかというと、このグリーストラップというものは、その構造上、必ず定期的にメンテナンスをしないと機能しなくなるものであるということをわかっていただきたかったからです。もちろん既にご存じの方が大半だと思うんですが、コレ知らない方がおられたら大惨事になるよっていうことをお伝えしたかったんです。
メンテナンスされていないグリーストラップ、溜桝を含めてなんですが、それは最終的に機能しないどころか、この枡から雑排水が溢れて周囲を水浸しにした挙げ句、周囲に悪臭を放つようになってきます。
このときには、キッチンの排水口から「ゴポ、ゴポポポ…」と音を立てて流れが悪くなり、それでも放置していると、最後には排水管の詰まりを引き起こして入居者の方からのクレームとなってしまいます。
こうなってからの清掃は通常よりも大変です。グリーストラップ内で固着してしまった大量の油を剥がし取り、繰り返し槽内を清掃しないと本来の性能を発揮しません。排水管の途中で詰まりを引き起こしている場合は、最悪清掃会社や水道工事業者に依頼しなければならなくなります。
「自分の物件は自分で定期的に清掃してるよ!」という方は大丈夫ですね。マーシーはこの前自宅の枡の清掃をサボって痛い目に遭いました。業者にお願いするような事態にまでは至らなかったんですが、枡から雑排水が溢れるところまで放置してしまいました。そりゃもうニオイと清掃が大変で…「きちんと定期的に清掃しよう…」と、悪臭漂う中、巨大な油の塊を掬いながら心に誓いましたとさ。
臭いものにはフタをしていても…たまには確認しましょうね!
「管理会社、もしくは専門業者がきちんと定期清掃してくれているよ!」という方も、長年自分の目で見てないようなら、これを機に一度様子を見てみるのもいいかもしれませんね?きれいな状態を保ってくれているようなら管理会社さんの日頃の作業に感謝!ですし、「あれ?最後に掃除したのはいつだ?けっこう汚れてるんだけど…」ということがあるかもしれません。普段目に入らないところなので、意識的に、能動的に確認しないと様子がわからない設備、それが排水桝…グリーストラップです。
マーシーもタクも、自身で枡やグリーストラップの清掃をやっているので、準備、やり方の手順や道具類についてもいろいろとお教えできますし、現状や管理状態が良くない場合でもいろいろとアドバイスや協力できることがあると思います。なにかあれば気軽に声を掛けてくださいね!
2記事目にして相当ロングな記事を書いてしまって、疲れとちゃんと見てもらえるかの心配でいっぱいです。。記事コメントか交流会でのフォロー、お待ちしていますね!!
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